リンパ浮腫とは

がん(癌)の手術でリンパ管を切除したり、放射線治療を行ったりすることでリンパの流れが悪くなり、手足や体がむくむことをリンパ浮腫(続発性)と言います。リンパ浮腫には発症の原因が不明である原発性のものもあります。
リンパ浮腫は適切な治療がなされず放置しておくと徐々に悪化し、日常生活はもちろん仕事や家事に支障を来たす可能性もあるため、できるだけ早期に発見・治療開始することが大切です。

リンパ浮腫の初期症状

  • 血管が見えにくくなる
  • 衣服の跡がつく
  • 皮膚のシワが減った
  • 皮膚がつまみにくい(皮膚をつまむと左右の厚さが違う)
  • 患肢が重い・だるい・疲れやすい・違和感がある・使いにくいなどの自覚症状 など
初期は安静や挙上(腕や脚を心臓より高く挙げること)で改善が見られますが、進行すると改善しなくなります。

どの部位に発症するのか?

腕では手術をした側(病変のある側)、脚では左右どちらに出るかわかりませんが、約20〜30%の割合で両側に発症します。

リンパ浮腫ケアについて

リンパ浮腫の複合的治療は以下の5つが中心となります。

スキンケア

リンパ浮腫を起こしている部位の皮膚は乾燥しやすく、免疫機能が低下しているため、容易に感染を起こしやすい状態です。患肢の皮膚を健全に保ち、しっかりスキンケアを行い炎症や感染を抑止することが大切です。

  • 皮膚の保湿(保湿剤を使用し乾燥を防ぐ)
  • 保清(皮膚を清潔に保つ)
  • 皮膚の保護(感染症を防ぐためにも、皮膚に傷を作らないように気をつける)
以上を心がけましょう。

用手的リンパドレナージ(MLD)

皮膚表面のリンパ液を順次深部のリンパ管へ、徒手的に流し込んでいく方法です。よく見かけるエステでのリンパドレナージとは異なり、皮膚の表面をストレッチしていくような優しい手技です。

圧迫療法

浮腫を軽減させる効果が最も高く重要な治療であり、むくんだ部位の減少およびその維持、皮膚の状態などの改善を目的に行います。圧迫療法の手段には、弾性着衣(スリーブ、グローブ、ストッキングなど)と多層包帯法があります。

圧迫下での運動療法

圧迫下で運動を行うと、筋ポンプ作用でリンパの流れが促進されます。腕でも脚でもリズミカルな運動を行うとよいでしょう。

日常生活上の注意

  • 過剰な負担をかけない
  • リンパの流れを止めない
  • 皮膚を傷つけない
ことが大切です。衣服の選び方、仕事や家事の際の姿勢、日常何気ない時の体勢、趣味活動の行い方など、工夫しながら生活しましょう。また、肥満とリンパ浮腫は密接に関連しており、リンパ浮腫発症や増悪の要因であることを指摘している報告も多く、体重管理も非常に大切です。

スキンケア・軽い運動・日常生活における注意は予防段階から大切ですが、②リンパドレナージ・③圧迫療法においては主治医の指示を受けてからにしましょう。またリンパ浮腫を発症した後も、適切な検査を受け、静脈に血栓がないことが確認されてからケアに臨まなければ、重篤な合併症を引き起こすことがありますし、その他既往の病状が悪化する場合もありますので、主治医の指示を仰ぐようにしましょう。

蜂窩織炎(ほうかしきえん)

蜂窩織炎は、リンパ浮腫になられた方の半数近くが経験すると言われる皮下組織の炎症のことです。原因の多くは細菌感染ですが、過度の疲労やストレスが引き金になることもあります。また、蜂窩織炎をきっかけにリンパ浮腫を発症することもあります。

蜂窩織炎の症状とは?

患部の皮膚に発赤(赤い斑点など)や熱感、痛みが見られる他、悪寒や38℃以上の発熱、より重篤な症状が出ることもあります。

蜂窩織炎への対処

蜂窩織炎が疑われた時は、なるべく早く医療機関を受診し、適切な処置を受けましょう。
受診までの応急処置として氷水などで患部を冷やし、できるだけ患肢を高い位置に保つようにします。保湿以外のすべてのリンパ浮腫ケア(ドレナージ・圧迫療法・運動)は一旦中止し、安静にしましょう。